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 今回は、「低用量ピル(以下、ピル)の副効用」についてお話します。ピルには高い避妊効果に加え、多くの副効用(体に良い作用)があります。
 第一の副効用は、月経痛の改善です。痛み止めが効かないような月経痛(月経困難症)に苦しんでいる女性でも、ピルを服用することで月経痛を自覚しなくなるか、生活に支障が無い程度にまで軽減します。当クリニックでは14歳の女子中学生がピルの最年少ユーザーですが、毎月学校を休むほどの月経痛は痛み止めが必要ないほど劇的に改善しています。
 第二の副効用は、月経不順の改善です。月経がいつ来るか分からないような月経不順の女性でもピルの服用で月経周期は28日と規則的になります。また、仕事や試験などで月経を避けたいときは、確実に月経の開始日を移動することができます。
 第三の副効用は、月経前の精神的、身体的な不調(月経前症候群と言います)の改善です。月経の1~2週間前から、気分の落ち込みやイライラ感、腹痛、頭痛、むくみ等、様々な不快な症状に成人女性の数人に一人が悩まされていると考えられます。これを、更年期障害や精神疾患と勘違いされて受診される方もいます。ピルはこれらの症状も軽減、改善します。
 第四の副効用は、月経血の減少です。子宮筋腫や子宮腺筋症などの病気の無い方は、ピルを服用することで驚くほど月経血が減少し、貧血の治療や予防になります。
 第五の副効用は、がんの予防です。今年イギリスで発表された研究報告によると、ピルを服用したことのある女性は非服用者に比べ、発がんのリスクが12%減少することが明らかになりました。これは4万6000人の女性を対象に36年間追跡調査を行った今までで最も大規模な研究です。特に低下したものは大腸がん、直腸がん、子宮体がん、卵巣がんなどです。従来、乳がんは若干上昇するとされていましたが、この研究ではピル服用者と非服用者間で統計的な差は認めませんでした。
 第六の副効用は、ニキビや多毛の改善です。従来の治療で効果がみられない場合、皮膚科でもピルを処方する先生が増えています。ピルは含まれている黄体ホルモンの種類によって3種類に分類されますが、その中の一つがニキビや多毛の治療に適切です。
 第七の副効用は、子宮内膜症による疼痛の軽減です。その治療に世界で最も広く使われている薬剤はピルですが、日本でも平成20年7月から「子宮内膜症に伴う月経困難症」に対して『ルナベル』というピルが保険適応となりました。
 この様に、ピルは「女性の生活改善薬」と言えます。

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