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 わが国で1999年9月に「低用量ピル(以下、ピル)」が発売され、今年(2009年)9月で10周年を迎えます。生殖年齢(15〜49歳)の女性を対象にした統計によれば、現在のピル・ユーザーは3%(70万人)、年間の伸び率は10〜15%で、10年後は9%に上昇すると推定されています。一方、世界でピルを服用している女性は約1億人、ピルの使用率は世界全体で7.5%、先進国で15.9%、発展途上国では6.2%と報告されています。地域別では、ドイツが58.6%と最も多く、オランダ49.0%、フランス35.6%、イギリス22.0%、アメリカ15.6%となっています。
 この10年で日本のピル・ユーザーも徐々に増えつつありますが、その普及率は発展途上国以下というのが現状です。その背景には、「太りませんか?」「がんになりませんか?」「赤ちゃんへの影響はありませんか?」など、ピルの副作用に対する不安や誤解が依然として強いことや、正しい知識が十分に浸透していないことがあり、それらが普及低迷の一因と考えられます。  
 そこで、今回はピルの「よくある質問」についてお答えします。

  • Q ピルを服用すると体重が増えると聞いたことがありますが?
  • A 過去に使われていたホルモン量の多い中用量及び高用量ピルでは、長期間の服用で体重増加が見られることもありましたが、現在使われている低用量ピルではほとんどの女性で体重増加は認めません。一方、月経痛や月経前症候群で食欲不振気味になっていいた女性が、ピル服用で症状が改善し適正体重に快復することは見受けられます。

  • Q ピルを服用するとがんになりやすくなると聞きましたが?
  • A 2007年にイギリスで発表された研究報告によると、ピルを服用したことのある女性は非服用者に比べ、発がんのリスクが12%減少することが明らかになりました。これは4万6000人の女性を対象に36年間追跡調査を行った、今までで最も大規模な疫学調査です。特に低下したものは大腸がん、直腸がん、子宮体がん、卵巣がんなどです。この予防効果は、ピル服用終了後も15年以上持続するとされています。一方、他の研究では乳がんは若干上昇すると報告されていましたが、この研究ではピル服用者と非服用者間で統計的な差は認めませんでした。また、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因の感染症であり、ピルとの関連性は明らかではないとされています。乳がんと子宮頸がんは検診で早期発見されれば、完治が可能な病気です。ピル服用の有無に関わらず、定期的に検診を受けることが大切です。

  • Q ピルの服用は赤ちゃんに影響を与えませんか?
  • A ピル服用者と非服用者を比較して、不妊症や赤ちゃんの催奇形性リスクが増加することはないと報告されています。また、ピル服用中に妊娠した場合や妊娠初期に誤ってピルを服用した場合も、赤ちゃんの催奇形性リスクが増加することはありません。

  • Q 産後はいつからピルの服用が可能でしょうか?
  • A 授乳していなければ、産後21日を経過すれば服用可能です。母乳栄養の場合、ピルが乳汁分泌を抑制する可能性があるため、分娩後6ヶ月までは服用を避けるべきです。

  • Q タバコを吸っていたらピルは服用できませんか?
  • A 喫煙している女性がピルを服用すると、静脈血栓症、肺塞栓症、心筋梗塞、脳卒中などの心血管系障害のリスクが上昇することが報告されています。このリスクはタバコの本数が増えるほど、また喫煙者の年齢が高くなるほど上昇します。35歳以上の喫煙されている女性はピルを服用することができませんが、禁煙すれば翌日からでもピルの服用は可能です。ご存知のように、喫煙には発がん性、不妊症、流産など様々な悪影響があります。ピル服用の有無に関わらず、禁煙、節煙することが大切です。

  • Q ピルは何歳から服用可能でしょうか?また、何歳まで服用できますか?
  • A 「低用量避妊薬の使用に関するガイドライン」では、初経以降であれば投与可能とされています。つまり、月経が始まっていれば小学生でも安全にピルを服用することができます。また、ピルは閉経まで服用可能ですが、 その判断は血中の卵胞ホルモン及び卵胞刺激ホルモン検査で行います。閉経のホルモン状態と診断された場合、ピルを中止します。ピル中止後に更年期障害を認める場合、よりホルモン量の少ない「ホルモン補充療法」に移行します。

今回は、ピルの「よくある質問」についてお話しました。少しはピルへの不安や誤解が解消できたでしょうか?多くの日本女性がピルの恩恵を享受できるように、これからもピルの正しい知識を提供したいと思います。

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