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今回は、「子宮頸がん」についてのお話です。 現在、日本では毎年1万5000人の女性が「子宮頸がん」と診断され、2500人の尊い命が奪われています。40歳以上で最も罹りやすい女性特有のがんは「乳がん」ですが、妊娠・出産を控えた20~30歳代では「子宮頸がん」が最も頻度が高く、20年前の5倍に増加しています。これは、少子化問題の面からも、社会的に重大な問題です。

  • Q 「子宮頸がん」は予防できると聞きましたが?
  • A 「子宮頸がん」は、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)という身体のどこにでもいるウイルスの感染が原因で発症することが解明されました。そして「子宮頸がん」の発症には、このウイルスの感染から4~10年の年月が必要です。子宮頸がん検診を1~2年に1度受診することで、前がん状態や初期がんでの早期発見が可能で、子宮を摘出することなく、つまり妊娠・出産の可能性を残して完治することができます。ところで、子宮頸がん検診の受診率に目を向けてみますと、欧米の70~80%に対し、日本では20%とかなり低く、検診の重要性がまだまだ浸透していない現実が浮かび上がります。

  • Q HPVは性交渉で感染すると聞きましたが、本当ですか?
  • A 「子宮頸がん」はHPVの感染が原因で発症しますが、このウイルスは性交渉によって感染します。しかし、HPVは身体のどこにでもいるウイルスで、HPV感染は風邪に罹るのと同じような極々ありふれた感染症です。つまり、性交渉があるなら誰もがHPVに感染する可能性があり、性病とは根本的に異なります。

  • Q 誰でも「子宮頸がん」になる可能性はありますか?
  • A HPVの感染は非常にありふれた一般的なもので、女性の80%は生涯に一度HPVに感染すると考えられています。しかし、ほとんどのHPVは免疫的に排除され、わずか0.1%が「子宮頸がん」に進行します。女性なら誰もが「子宮頸がん」になる可能性はありますが、子宮頸がん検診で予防可能です。

  • Q HPVワクチンについて教えて下さい。
  • A 「子宮頸がん」を引起す原因がHPV感染であると確定され、HPV感染予防および前がん病変の予防効果のあるHPVワクチンが開発されました。最も推奨されるワクチン接種の対象は、初交前の女児(11~14歳)ですが、初交後でも効果は認められています。2006年にはアメリカ及びEU諸国でHPVワクチンが認可され、今日まで100カ国以上で認可されています。現在、オーストラリア、カナダ、アメリカ、EU諸国では公費負担で実施されています。日本ではやっと臨床試験が終了した段階で、これから認可される見通しです。将来HPVワクチンが普及すれば、「子宮頸がん」の70%をそれで予防し、残り30%を子宮頸がん検診で予防することが可能です。

 

今回は、「子宮頸がん」についてお話しました。 妊娠・出産を控えた20~30歳代女性の「子宮頸がん」罹患率が増加傾向にあり、社会的にも大きな問題となっています。しかし、1~2年毎に子宮頸がん検診を受診することで、がんになる前に子宮を摘出することなく治療することができます。また、将来HPVワクチン接種が普及すれば、子供達の将来の「子宮頸がん」発症を予防することが可能となります。「子宮頸がん」は予防できるがんなのです。