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:「子宮頸がん予防ワクチン」をご存知ですか?

「子宮頸がん検診」で異常な細胞を認めた場合、精密検査が必要となりますが、二通りに分かれます。

  1. ①検査結果と精密検査について産婦人科医から直接説明を受ける
  2. ②郵送で精密検査通知を受け取る
②の場合、精密検査の文字を見ただけでも動揺するところに、「意義不明な異型扁平上皮細胞」と書かれている状況を想像して下さい。まさに意義不明?です。

以前「子宮頸がん検診で精密検査が必要と連絡が来たら」と題してお話しましたが、今回は特に分かりづらい「意義不明な異型扁平上皮細胞」と診断を受けた時のお話です。

☆「子宮頸がん」について教えてください。

「子宮頸がん」は子宮の入り口の子宮頸部にできる悪性腫瘍で、30~40歳代に多く、20~30歳代では「乳がん」より高い罹患率(りかんりつ)になっています。毎年1万5000人の女性が「子宮頸がん」と診断され、2500人の尊い命が奪われています。
「子宮頸がん」は、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)が子宮頸部に感染することが原因で発症します。HPVは皮膚や粘膜のどこにでもいるウイルスで、150種類以上ありますが、そのうちの15種類ほどが「子宮頸がん」発症に関与し、「発がん性HPV」と呼ばれています。このウイルスは性交渉によって感染しますが、HPV感染は風邪に罹るのと同じような極々ありふれたもので、性病とは根本的に異なります。女性の80%は生涯に一度は「発がん性HPV」に感染しますが、ほとんどは免疫的に排除され、一過性です。しかし、HPVは一度排除されても、何度でも感染する可能性があります。排除されなかったHPVの感染が5~10年間持続すると、「前がん病変」の「子宮頸部異形成」を経て約0.1%が「子宮頸がん」に進展します。

 

☆「子宮頸がん予防ワクチン」について教えて下さい。

わが国では「子宮頸がん検診」の細胞診の結果をⅠ、Ⅱ、Ⅲ(Ⅲa、Ⅲb)、Ⅳ、Ⅴの5段階に分けて報告する「クラス分類」が使われていました。この中で、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴが精密検査の対象です。この分類は分かりやすく便利な報告様式でしたが、微妙な異常を分類できず、がんを見落とす可能性がありました。また、子宮頸がんの原因が解明され、その医学的根拠を取り入れた新しい分類が必要となりました。  
このような経緯で、わが国でも世界的に使われている「ベセスダシステム」を採用することになりました。「ベセスダシステム」では、細胞診の結果がその後の検査・治療に直接結びつくような分類になっています。

 

☆	ワクチンの接種を受ければ、子宮頸がん検診を受けなくてもいいのですか?

「意義不明な異型扁平上皮細胞」とは「ベセスダシステム」の分類の一つで、従来の「クラス分類」ではⅡ~Ⅲaに相当します。陰性と前がん病変の間に位置するグレーゾーンで、「前がん病変の疑い」とも表現できます。  
検診受診者の5%未満がそれに該当し精密検査が必要となりますが、そのうちのわずか3%程度が治療の対象になると報告されています。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

「意義不明な異型扁平上皮細胞」と診断された場合、①HPV検査(発がん性HPVの感染の有無を調べる検査)を行う、②6ヵ月以内に細胞診を再検する、の2つの方法がありますが、①のHPV検査の実施が推奨されています。
HPV検査を実施した場合、約半数の方が陽性と診断されます。陽性の方にはただちに精密検査の「子宮頸部組織診」を施行します。その結果、前がん病変の「子宮頸部異形成」を認めた場合、細胞診による定期的な管理または治療が必要です。
HPV検査が陰性の場合、12ヵ月後に細胞診を再検します。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

「子宮頸部異形成」は、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成、上皮内がん)に分類されています。CIN1、CIN2と診断された場合、定期的に細胞診で管理しますが、「発がん性HPV」の型を判定する「HPVタイピング検査」を行い、その結果で管理の間隔を決める方法もあります。CIN3(高度異形成、上皮内がん)は治療が必要です。


ドクター

 

今回は、「意義不明な異型扁平上皮細胞」と診断を受けた際の精密検査及び管理についてお話しました。精密検査の通知が来ても、がんと診断された訳ではありません。決して過剰な心配をする必要はありません。
わが国でも導入された「ベセスダシステム」により、子宮頸がん検診の精度の向上が期待できます。その一方、「子宮頸がん検診」の受診率は先進24カ国中最下位の20%台といまだに低迷しています。残念ながら、北海道の受診率は全国平均を下回っている状況です。「子宮頸がん検診」と「子宮頸がん予防ワクチン」の両輪で「子宮頸がん」は100%予防できますが、まずは「子宮頸がん検診」の受診率向上が必要です。