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:「子宮頸がん予防ワクチン」をご存知ですか?

「子宮頸がん検診」で精密検査が必要な人の割合(要精検率)は、検診受診者の約1%、100人に1人と報告されています。「子宮頸がん検診」に於けるがんの発見率は0.06%、つまり精密検査が必要な人100人中6人に子宮頸がんが見つかる計算になります。
精密検査の通知が来ても、がんと診断された訳ではありません。決して過剰な心配をする必要はありません。その時、冷静に対応するためにはどうしたら良いでしょうか?今回は、「子宮頸がん検診で精密検査が必要と連絡が来たら」と題してお話します。

☆「子宮頸がん」について教えてください。

「子宮頸がん」は子宮の入り口である子宮頸部にできる悪性腫瘍で、30~40歳代に多く、20~30歳代では「乳がん」より高い罹患率(りかんりつ)になっています。毎年1万5000人の女性が「子宮頸がん」と診断され、2500人の尊い命が奪われています。
「子宮頸がん」は、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)が子宮頸部に感染することが原因で発症します。HPVは皮膚や粘膜のどこにでもいるウイルスで、150種類以上ありますが、そのうちの15種類ほどが「子宮頸がん」発症に関与し、「発がん性HPV」と呼ばれています。このウイルスは性交渉によって感染しますが、HPV感染は風邪に罹るのと同じような極々ありふれたもので、性病とは根本的に異なります。女性の80%は生涯に一度は「発がん性HPV」に感染しますが、ほとんどは免疫的に排除され、一過性です。しかし、HPVは一度排除されても、何度でも感染する可能性があります。排除されなかったHPVの感染が5~10年間持続すると、「前がん病変」を経て約0.1%が「子宮頸がん」に進展します。

 

☆「子宮頸がん予防ワクチン」について教えて下さい。

子宮の入り口である子宮頸部の表面をブラシなどでこすって細胞を採取し、顕微鏡で調べる検査を、「子宮頸部細胞診」といいます。これが、皆さんが受けている「子宮頸がん検診」で、所謂「ふるい分けの検査(マス・スクリーニング)」と呼ばれるものです。スクリーニングとは、病気の症状が現れていない状態で、病気の可能性を調べることを言います。決して100%ではありませんが、病気の疑いがあるかないかを調べ、疑いのある方を更に精密検査で調べることにより「子宮頸がん」の早期発見率の向上に結び付け、死亡率の低下につながります。

 

☆	ワクチンの接種を受ければ、子宮頸がん検診を受けなくてもいいのですか?

「子宮頸部細胞診」で異常な細胞を認めた場合、精密検査である「子宮頸部組織診」が必要です。精密検査が必要な人の割合(要精検率)は、検診受診者の約1%、100人に1人と報告されています。「子宮頸がん検診」に於けるがんの発見率は0.06%、つまり精密検査が必要な人100人中6人に「子宮頸がん」が見つかる計算になります。精密検査の通知が来ても、がんと診断された訳ではありません。決して過剰な心配をする必要はありません。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

精密検査である「子宮頸部組織診」とは、子宮頸部をコルポスコープ(膣拡大鏡)という顕微鏡で観察しながら、異常が疑われる部位から鉗子で少量の組織を採取するものです。この病理組織診断をもとに、今後の検査や治療の方針を決定します。組織診断の結果は、「正常」、「異形成」、「上皮内がん」、「浸潤がん」に分類されます。「上皮内がん」とは、子宮頸部の表面に限局したがんで、放置すると「子宮頸がん(=浸潤がん)」に進行します。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

前述しましたように、「発がん性HPV」に感染してもほとんどは一過性ですが、排除されなかったHPVの感染が5~10年間持続すると、「前がん病変」の状態である「子宮頸部異形成(しきゅうけいぶいけいせい)」へと進展します。異形成は軽度、中等度、高度の3段階を経て、がん化していくとされています。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

病変が子宮頸部の上皮(表面)に限局している場合を、「子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasm)と言い、CINと略されています。CINは更に、CIN1(軽度異形成)、CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成、上皮内がん)に分類されています。
CIN1(軽度異形成)は、80%以上は自然に治癒しますが約10%がCIN3以上の病変に進行するといわれています。治療の必要はなく、3~6カ月毎の定期的検診が必要です。
CIN2(中等度異形成)は、約20%がCIN3以上の病変に進行するといわれています。3カ月毎の定期的検診が必要ですが、CIN2が1年以上持続する症例では、レーザー蒸散術を行う場合もあります。
CIN3(高度異形成、上皮内がん)は、すでに腫瘍化が始まっているため、30%以上が数年で「子宮頸がん」に進行するといわれています。よって、「子宮頸がん」になる前段階のCIN3で治療することが大切です。治療に時期や方法は、患者さんの年齢、挙児希望の有無、妊娠の有無などで個別に判断し、円錐切除術(=子宮頸部を切除し子宮を残します)または単純子宮全摘術が行われます。なお、妊娠中に診断された「上皮内がん」は、厳重な管理のもとに進行がなければ、分娩終了後の治療が選択されます。

産婦人科医
今回は、「子宮頸がん検診で精密検査が必要と連絡が来たら」と題してお話しました。精密検査の通知が来ても、がんと診断された訳ではありません。決して過剰な心配をする必要はありません。CIN3の段階で治療を行えば、完治可能なのです。そのためにも、定期的に「子宮頸がん検診」を受診することが大切です。しかし、残念ながら日本の「子宮頸がん検診」受診率は先進24カ国中最下位の20%台と低迷しています。
「子宮頸がん検診」+「子宮頸がん予防ワクチン」で、「子宮頸がん」は100%予防できる時代です。