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:「子宮頸がん予防ワクチン」をご存知ですか?

「多囊胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」とは? この長い病名をご存知の方は少ないと思いますが、生殖年齢女性の実に5~10%に認められます。この病気は、若年から性成熟期には月経異常や不妊症の主要な原因となり、性成熟期以降は2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心筋梗塞、脳卒中、子宮体がんなどのリスク因子となります。このように「多囊胞性卵巣症候群」は女性のライフステージに渡って様々な疾病を引き起こす可能性がある身近な病気なのです。

☆「子宮頸がん」について教えてください。

卵巣の中には沢山の卵胞(卵子が入っている袋)が存在しますが、月経が始まるころより脳の下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンによって次第に増大し、約20mmの大きさになると排卵(卵巣から成熟した卵子が排出すること)が起こります。
「多囊胞性卵巣症候群(英語名を略してPCOSと呼ばれます)」とは、その病名の通り、卵巣の中に沢山の未成熟な卵胞が出来るのですが、なかなか排卵できず、月経異常や不妊症の原因となる病気です。男性ホルモンの分泌過剰による男性化(多毛、ニキビなど)や、肥満を伴うこともあります。

 

☆「子宮頸がん予防ワクチン」について教えて下さい。

PCOSの原因は解明されていませんが、視床下部、下垂体、卵巣、および副腎から分泌されるホルモン量の異常、糖代謝異常、遺伝や環境などの因子が複雑に絡まっている疾患と考えられています。
ところで、下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンは卵巣に働いて卵胞の発育や排卵を促します。PCOSでは、黄体化ホルモンの分泌が増えて卵胞刺激ホルモンとのバランスの乱れがおこり、卵胞の成熟と排卵がうまくいかない状態にあります。排卵が起こらないと、排卵をさせようと更に黄体化ホルモンの分泌が増えるため、この乱れがますますひどくなるという悪循環に陥ります。 
また 、PCOSではインスリンの作用低下を認めることが分かってきました。インスリンとは膵臓から分泌されるホルモンで、糖を筋肉などの細胞に取り込んでエネルギーを産生します。PCOSでは、血糖調節のため膵臓からのインシュリンの分泌が増加しており、これが卵巣からの男性ホルモンの分泌を促進させることにより男性化を招きます。

 

☆	ワクチンの接種を受ければ、子宮頸がん検診を受けなくてもいいのですか?

PCOSでは、
①排卵が起こりにくいことによる月経不順や無月経 
②男性ホルモンの増加による男性化(多毛症、にきび、声が低くなる)
③糖代謝異常による肥満
などを認めます。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

詳しい問診、超音波検査、血液中のホルモン検査およびホルモン負荷試験などで診断します。なお、日本産科婦人科学会のPCOS診断基準(2007年)では、以下をすべて満たす場合をPCOSと診断します。
①月経異常(無月経、希発月経、無排卵周期症 
②超音波検査で多囊胞性卵巣の所見 
③血中男性ホルモン高値または黄体化ホルモン基礎値高値かつ卵胞刺激ホルモン基礎値正常 

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

治療には、生活改善(食事療法、運動療法など)、薬物療法、手術療法がありますが、妊娠の希望の有無で治療法は異なります。  
現時点で妊娠を希望しない場合、黄体ホルモン及び低用量経口避妊薬(低用量ピル)により定期的な出血(消退出血)をおこします。低用量ピルには、男性ホルモンを低下させることによる多毛やニキビの治療効果、および子宮内膜癌の予防効果も報告されています。BMIが25以上の肥満を伴う方には食事療法、運動療法による減量の指導及び管理が大切です。これにより、将来の2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心筋梗塞、脳卒中などの発症予防につながります。
妊娠を希望される場合、薬物療法による排卵誘発を行います。まず、第一選択薬であるクロミフェン療法(内服薬)を行います。インスリン抵抗性を認める場合は、メトホルミン(インスリン非依存型糖尿病治療薬)を、男性ホルモンの高い場合はグルココルチコイドを、乳汁分泌ホルモンの高い場合はドパミン作動薬をそれぞれ併用します。クロミフェン療法が無効の場合、ゴナドトロピン療法(注射による排卵誘発)または外科的治療(腹腔鏡下卵巣多孔術)を行います。これらの治療を行う際、子宮筋腫や子宮内膜症の合併など様々な要因が関係するため、個別的な判断が必要となります。

産婦人科医
「多囊胞性卵巣症候群」は、若年から性成熟期には月経異常や不妊症の主要な原因となり、性成熟期以降は2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心筋梗塞、脳卒中、子宮体がんなどのリスク因子となります。女性のライフステージの長期間に渡って様々な疾病を引き起こす可能性があるため、予防医学的な指導と管理が必要です。自覚症状ある方、お気軽に産婦人科医にご相談下さい。