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今回は、「続発性無月経(ぞくはつせいむげっけい)」についてのお話です。 「就職してから生理がきていない」、「ダイエットに成功したが生理がこなくなった」、「初経はみられたがその後生理がこない」など、今までみられた月経が3ヶ月以上停止した状態を「続発性無月経」といいます。月経不順、不正出血と並び、婦人科外来を受診される方の中で最も多い受診理由の一つです。

月経はどのようにして起こるのですか?

月経は卵巣から分泌される女性ホルモンで調節されていますが、この女性ホルモンが分泌されるまで、様々なホルモンが関与しています。まず、司令塔とも言うべき脳の「視床下部」から「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」が放出され、それが同じく脳の「下垂体」から「性腺刺激ホルモン」を分泌させます。そしてこのホルモンの命令で、卵巣から女性ホルモンが分泌されるのです。また、女性ホルモンの量は常に視床下部に監視され、適切な量になるように調節を受けています。子宮は女性ホルモンの作用で妊娠の準備を行いますが、妊娠が成立しない場合に月経が起こります。

 

どんな病気ですか?

今までみられた月経が3ヶ月以上停止した状態を「続発性無月経」といいます。ただし、妊娠中、授乳中及び産後の無月経は生理的なもので、「続発性無月経」には含めません。また、初経後や思春期に見られる短期間の無月経も、決して病的なものではなく、月経周期の発達の過程に見られる正常の現象であり、治療の必要もありません。しかし、長期に渡る無月経は回復が難しくなとことが多いので、3ヶ月以上無月経が続く場合は医師に相談してください。

 

どんな原因がありますか?

最も多くみられる「続発性無月経」の原因は「ストレス」です。「ストレス」とは、体の外からの有害な刺激(精神的、社会的、物理・化学的)に対し、体が自己を守る防衛反応ですが、この「ストレス」が月経を調節している脳の「視床下部」の働きを混乱させ、「続発性無月経」の原因となります。具体的には、入学や就職に伴う「環境に対するストレス」、運動選手にみられる「過度のスポーツ」、若い女性にみられる「ダイエットによる体重減少」、思春期にみられる「神経性食欲不振症」などです。その他の原因として、発汗、動悸、体重減少などを伴う「甲状腺機能亢進症」、乳汁漏出や不妊症を伴う「高プロラクチン血症」、月経不順や不妊症を伴う「多囊胞性卵巣症候群」、降圧剤、胃薬、抗うつ剤による「薬剤性」などがあります。

 

どのような治療がありますか?

月経歴、妊娠・分娩歴、既往歴、内服薬の有無などの詳細な問診、超音波検査、血液ホルモン検査などを行います。血中ホルモン検査では、女性ホルモン、男性ホルモン、性腺刺激ホルモン、プロラクチン、甲状腺ホルモンなどを調べます。さらに、ホルモン負荷試験で無月経の程度や種類を調べます。

 

「ホルモン補充療法」で乳がんが増えると聞いたことがありますが?

「ストレス」が原因の「続発性無月経」に対してはホルモン治療が行いますが、カウンセリングや生活指導も大切です。「神経性食欲不振症」の場合は、精神科での治療を優先させます。「甲状腺機能亢進症」は内科で薬物治療を行います。「高プロラクチン血症」は薬物治療を行いますが、脳神経外科で下垂体のMRI検査をお願いすることもあります。 「多_胞性卵巣症候群」に対しては低用量ピルなどでホルモン治療を行いますが、妊娠を希望される場合は排卵誘発剤を使用し、それが無効の場合は腹腔鏡下手術を行います。

ストレス
「続発性無月経」は婦人科外来を受診される方の中で最もポピュラーな症状の一つで、その多くは「ストレス」を原因とし、いわば現代病とも言えます。しかし、その中には「神経性食欲不振症」など早期に治療を必要とする疾患が隠れていることもあります。3ヶ月以上月経がこない時は婦人科医にご相談下さい。