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『過多月経』は鉄欠乏性貧血の原因になります

☆「過多月経」とは?

低用量経口避妊薬(以下、低用量ピル)には避妊効果以外に、月経痛の改善、月経量の減少、月経前症候群・月経前不快気分障害の改善、にきび・多毛症の改善、卵巣癌・子宮体癌・大腸癌リスクの低下など多くの副効用がありますが、2008年、2010年と相次いで「月経困難症」の治療薬としての低用量ピルが保険収載されました。これらの保険適応治療薬を、従来の避妊目的に自費で処方される低用量ピルと区別するため、わが国では「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(以下、LEP)」と呼ぶことが慣例となりました。LEPには第1世代及び第4世代の黄体ホルモンを含む2種類があり、服薬方法では21日間服用7日間休薬及び24日間服用4日間休薬する周期的投与法と、最長120日間連続服用4日間休薬するフレックス投与法の3種類があります。
わが国で低用量ピルが承認されたのは1999年、すでに19年が経過しましたが未だにその普及率は生殖可能年齢(15歳~49歳)の5%に及びません。しかし、「月経困難症」の治療薬として保険収載されたLEPの処方数は急速に増加しています。
今回は、選択肢が広がった低用量ピル及びLEPの使用・治療目的に合った選択法についてお話します。

 

☆「過多月経」とは?

「適切な避妊」の条件として、①確実、②簡便、③副作用が無い、④女性の意思だけで実施可能、などが挙げられますが、低用量ピルはこれらを兼ね備えた最適の避妊法と言えます。低用量ピルを適切に服用した場合、100人の女性が一年間に妊娠する確率は0~0.59%とされています。コンドームやリズム法より避妊効果は高く、女性避妊手術や薬物添加子宮内避妊具と同等の避妊効果があります。避妊目的には自費の低用量ピルを選択します。

 

☆「過多月経」の症状を教えてください

「月経困難症」とは、月経期間中に起こる病的な症状のことで、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、吐き気、頭痛、脱力感、食欲不振、イライラ、下痢および憂うつの順に多く見られます。低用量ピルは、子宮内膜の増殖を抑制することや子宮内膜からのプロスタグランディンの産生を抑制することで月経困難症の軽減につながると考えられています。
月経困難症の治療目的にはLEPを選択します。また、出血の回数・日数を減らしたい場合や、休薬期間に頭痛・乳房の張り・気持ちの不安定などを感じる場合、120日間連続服用可能なLEPを選択します。

 

☆「過多月経」の主な原因を教えてください

「月経前症候群」とは、月経の1~2週間前からはじまる身体的な不調や精神的に不安定な状態で、月経が始まると改善するものを言い、主に精神症状が強いものを「月経前不快気分障害」と言います。代表的な身体的症状としては、下腹部や乳房の張りや痛み、頭痛、肌荒れ、便秘や下痢、むくみや体重増加、食欲がでる、体がだるいなどで、精神的症状としては、イライラする、怒りっぽい、憂うつになる、集中できない、落ち着かない、不安になる、泣きたくなる、眠くなる、などがあります。月経のある女性の5~8割が何らかの症状を自覚していますが、日常生活に支障が出る場合には治療が必要です。
現在、「月経前不快気分障害」の薬物療法で有効とされているのは、選択的セロトニン受容体阻害薬と第4世代黄体ホルモンのドロスピレノンを含むLEPです。LEPは、「月経前症候群」に対する有効性も期待できます。

 

☆「過多月経」の治療方法を教えてください

「子宮内膜症」とは、子宮内膜に似た組織が子宮腔以外の様々な場所(卵巣、腹膜、直腸、膀胱、肺など)で増殖・炎症・癒着を引き起こし、おもに痛みと不妊の原因となる女性ホルモン依存性の病気です。子宮内膜症の痛みには、月経困難症・月経時以外の下腹部痛・腰痛・性交痛・排便痛などがあり、この治療にはLEPを選択しますが、休薬期間が4日間及び7日間のLEPが無効な場合、120日間服用可能なLEPを選択します。

 

☆「過多月経」の治療方法を教えてください

卵巣にできた子宮内膜症を「卵巣チョコレート囊胞」と言い、LEPはこれを縮小させる効果があります。しかし、腹膜、直腸、膀胱、肺などの子宮内膜症病変・病巣の縮小効果は明らかになっていません。

 

☆「過多月経」の治療方法を教えてください

低用量ピル・LEPには避妊効果以外に多くの副効用(=利点)があり、女性のQOL(生活の質)を高める生活改善薬と言えます。医師が低用量ピル・LEPを適正に処方し、女性が安全かつ安心して服用するためには処方前の問診が大切です。年齢、喫煙などの生活習慣、服用している薬剤、現病歴、既往歴、家族歴などを聴取し、体重・血圧測定を行い、低用量ピル・LEP服用の可否を慎重に診断します。また、服用中にも定期的な問診と体重・血圧測定を行い、子宮頸がん検診、乳がん検診、及び健康診断の受診指導を行います。医学的禁忌がない限り、生殖可能年齢の女性は服用可能とされている低用量ピル・LEPですが、40歳以上、特に45歳以上では副作用のリスクが高まる可能性があり、他のホルモン剤などへの変更及び中止を考慮します。

  ドクター