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:「子宮頸がん予防ワクチン」をご存知ですか?

性成熟期の女性に強い月経痛が見られる場合、皆さんは「子宮内膜症」と「子宮筋腫」が頭に浮かぶことでしょう。実はもう一つ、今回お話しする「子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)」の可能性があります。
「子宮腺筋症」の症状には、年々強まる月経痛がありますが、これは以前お話しした「子宮内膜症」と似ています。また、「子宮腺筋症」には過多月経やそれに伴う貧血も見られ、これは「子宮筋腫」とよく似ています。このように、「子宮腺筋症」は女性のQOL(生活の質)を低下させる「女性ホルモン依存性の疼痛疾患」です。自分の生活様式に合った治療法の選択が大切です。

☆「子宮頸がん」について教えてください。

子宮内膜は子宮の内側にある組織で、女性ホルモン(エストロゲン)の影響で厚くなり受精卵の着床に備えますが、妊娠が成立しない場合は月経血とともに子宮から排出されます。
「子宮腺筋症」とは、子宮内膜組織が何らかの原因で子宮の壁(筋層)の中にもぐり込み、増殖する病気です。子宮筋層内にもぐり込んだ子宮内膜組織から月経時に出血が起こり、子宮壁は次第に肥厚します。「子宮腺筋症」には、子宮全体が膨らむものと子宮壁が部分的に厚くなるものがありますが、「子宮筋腫」のように限局した腫瘤(核)は認めません。
一方「子宮内膜症」とは、子宮内膜に似た組織が、子宮の内側以外の色々な場所にできて、女性ホルモンの影響で増殖と剥離を繰り返す病気です。
「子宮腺筋症」は30代~40代のお産の経験がある女性の約10%に発症すると推察されていますが、最近では20代~30代のお産の経験のない女性にも増加傾向が見られます。「子宮腺筋症」と診断された女性の50%に「子宮筋腫」を、10%に「子宮内膜症」の合併を認めます。また、「子宮内膜症」と同じく、女性ホルモン依存性であるため、出産直後は軽快し、閉経後には治癒する特徴があります。

 

☆「子宮頸がん予防ワクチン」について教えて下さい。

「子宮腺筋症」ができる原因は解明されていませんが、分娩や流産の経験、子宮手術の既往のある女性に多いとの報告もあります。

 

☆	ワクチンの接種を受ければ、子宮頸がん検診を受けなくてもいいのですか?

年々増強する月経痛・骨盤痛・過多月経・過長月経などを認めます。しかし、何ら症状がなく偶然に診断される症例も30%程度認めます。不妊症は少なく、「子宮腺筋症」に見られる不妊例は、合併する子宮内膜症や子宮筋腫が原因と考えられます。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

詳しい問診、婦人科的診察、超音波検査およびMRI検査などの画像診断、腫瘍マーカー(CA125)などで診断します。「子宮腺筋症」の50%に「子宮筋腫」の合併を認めますが、この診断にはMRI検査が最も有用です。「子宮腺筋症」の最終診断は、手術摘出標本の病理組織検査によります。

 

ワクチンの予防効果は、年代によって違うと聞きましたが本当ですか?

治療法には薬物療法と手術療法がありますが、どんな治療法を選択するのかは、症状の程度、年齢、及び挙児希望(妊娠・出産希望)の有無によって個別的判断が必要です。
薬物療法には、「鎮痛剤」、「低用量ピル」、「プロゲスチン経口剤」、「GnRHa療法」などがあります。「将来的には子供は欲しいけど今は仕事をしたい女性」に最適なのは、「低用量ピル」。他のホルモン剤と比べて副作用が少なく、安価で長期間使用できるのが特徴です。「プロゲスチン経口剤」は、不正出血などの副作用を伴いますが、疼痛改善率が高く、高血圧症や喫煙習慣のある女性でも使用が可能です。また、「GnRHa療法」は、閉経が近い女性に使用して手術を回避する「逃げ込み療法」や、手術前の補助療法としての使用が一般的です。
手術療法には、病巣を可能な限り切除する「子宮腺筋症核出術」と、根治手術である「子宮全摘術」があります。薬物療法で症状の改善を認めず、閉経までの期間が長い場合には「子宮全摘術」を選択します。薬物療法が無効でどうしても子宮を残したい場合や、「子宮腺筋症」が長期の不妊症の原因として疑われる場合などは、病巣が限局している症例に限り、「子宮腺筋症核出術」を選択します。しかし、この手術で完全に病巣を摘出することはできません。また、手術により月経痛や過多月経の著明な改善や妊娠率の上昇を期待できますが、妊娠中の子宮破裂の報告もあります。

ストレス
「子宮腺筋症」は、出産経験がある女性の10人に1人が持っている「女性ホルモン依存性の疼痛疾患」ですが、最近では30代の若い世代や出産経験のない女性にも増加傾向が見られます。約30%は無症状ですが、「子宮内膜症」、「子宮筋腫」同様、根治手術以外では閉経まで完治することが出来ず、月経困難症、過多月経、貧血といった女性のQOL(生活の質)低下の原因となります。自覚症状ある方、お気軽に産婦人科医にご相談下さい。