Back Number

月経を早めたり遅らせたりできますか?

●はじめに

月経痛の有無にかかわらず、月経が大切なイベントにぶつかることは避けたいものです。「入学試験、スポーツ大会、演奏会などで、最も体調の良い状態で実力を発揮したい」、「修学旅行、結婚式などの大切な行事を月経の心配なく楽しみたい」など、女性のライフスタイルに合わせて月経周期をコントロールすることを月経移動と言います。

 

●月経周期を早める方法と遅らせる方法、どちらを選択するか?

月経移動には、月経を早める方法と遅らせる方法があります。
月経を早めるメリットは、月経を移動させたい時期にホルモン剤を服用しなくて済むことです。デメリットは、服用期間中に不正出血が起こる可能性があること、服用終了後の出血がいつ起こるか、何日間続くかを完全には予想できないことです。
月経を遅らせるメリットは、正しく服用できればほぼ確実に月経を遅らせることができることです。デメリットは、月経を移動させたい時期にホルモン剤を忘れずに服用しなければならないことです。また、ホルモン剤には頻度は少ないものの、吐き気やむくみなどのマイナートラブルがあり、せっかく月経を移動できても最も体調の良い状態を得られない場合があります。事前に避けたいイベントの日程がわかっている場合、月経を早める方法を考慮します。

 

●月経周期を早めたい場合は?

月経を早めたい場合、月経開始の3~7日目から低用量ピルまたは中用量ピルを10~14日以上服用します。服用終了後、2~5日後に出血が起こります。服用期間が14日より短いと出血が起こらないことがあります。

 

●月経周期を遅らせたい場合は?

月経を遅らせたい場合、月経予定の5~7日前より中用量ピルまたは経口黄体ホルモン剤を遅らせたい時期まで服用します。排卵後の服用開始なので、妊娠の可能性があることに注意します。

 

●アスリートへの対応は?

すでに低用量ピルを服用中の女性は、実薬の服用中は7日前後の出血の移動が可能です。ただし、出血を早める場合は避妊効果に影響が出ることもあります。

 

☆「過多月経」の治療方法を教えてください

月経痛のみならず、月経前の不調(むくみ、頭痛、乳房のはり、体重増加、気分不良など)を自覚しているアスリートには、低用量ピルで月経周期を早める方法を優先します。
全ての低用量ピル、中用量ピル及び経口黄体ホルモン剤は、ドーピング禁止薬ではありません。

 

●最後に

低用量ピル、中用量ピル及び経口黄体ホルモン剤で安全に月経移動を行うために、処方前に年齢、喫煙などの生活習慣、服用している薬剤、月経歴、現病歴、既往歴、家族歴などを聴取し、体重・血圧測定を行い、服用の可否を総合的に判断します。
月経周期の確立および骨成長への影響を考慮すると、14歳以上での服用が望ましいとされています。医学的禁忌がなくとも45歳以上では副作用のリスクが高まる可能性があり、服用はお勧めできません。産後4週間以内及び産後6カ月未満の授乳中の方は服用できません。手術前4週間以内は服用できませんので、手術の1周期前の月経を調節します。前兆を伴う片頭痛、35歳以上の喫煙者、高血圧症、血管病変を伴う糖尿病、重篤な肝障害、乳癌・血栓症の既往、脳血管障害・心疾患などを有する女性は服用できません。
また、服用中は脱水や不動を避け、頭痛、手足のシビレや痛みなどのいつもと違う症状を自覚した場合には、服用を中止する必要があります。

 

☆「過多月経」の治療方法を教えてください

受験や競技会などの日程が事前に決まっている場合、数か月前から低用量ピルを開始することで吐き気などのマイナートラブルに体が順応し、快適で確実な月経移動が可能となります。
月経移動をきっかけに、避妊以外に月経困難症や子宮内膜症の治療など多くの副効用(=利点)のある低用量ピルの服用を開始、継続することをお勧めします。

  ドクター